薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 理論問題 - 問 110,111
解糖系では、下の図1のように、D−グルコースがD−フルクトース1,6−ビスリン酸へと変換されたのちに、2分子のピルビン酸へと分解される。
また、図2のように、D−フルクトース1,6−ビスリン酸は、アルドラーゼによって、代謝物AとBへ変換される。この反応はアルドール反応の逆反応である。
さらに、図3のように、代謝物AとBは細胞質中で酵素的に相互変換可能であり、代謝物Bはさらに代謝物Cを経て、ピルビン酸まで変換される。
問110
代謝物Aの構造として正しいのはどれか。1つ選べ。
問111
解糖系に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 アルドラーゼにより六炭糖が三炭糖に開裂する反応(図2)は、加リン酸分解である。
2 D−グルコースから代謝物Aを生じるまでの過程でATPを産生する。
3 図3のうち、代謝物Bから代謝物Cを生じる反応は、基質レベルのリン酸化である。
4 図3で生じたNADHは、シャトル機構により細胞質からミトコンドリアのマトリックスに運ばれる。
5 D−グルコースからD−フルクトース1,6−ビスリン酸の生成過程は、ATPにより促進され、AMPにより抑制される。
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問110 解答 2
D−フルクトース1,6−ビスリン酸は、アルドラーゼによる逆アルドール反応を経て、代謝物AとBへ変換されるため、逆反応であるアルドール反応を考える。
アルドール反応とは、α水素を有するカルボニル化合物が他のカルボニル化合物と反応してβ−ヒドロキシカルボニル化合物が生成する反応である。
D−フルクトース1,6−ビスリン酸が代謝物Aと代謝物Bのアルドール反応で生成すると考えたとき、D−フルクトース1,6−ビスリン酸の2位のカルボニル基から見てβの位置に存在する4位のヒドロキシ基が元々カルボニル基であったことがわかる。
したがって、D−フルクトース1,6−ビスリン酸は、アルドラーゼによる逆アルドール反応を経て次のように反応するため、代謝物Aの構造として正しいのは選択肢2である。
なお、代謝物Aはジヒドロキシアセトンリン酸、代謝物Bはグリセルアルデヒド3−リン酸である。
問111 解答 解なし
1 誤
加リン酸分解反応とは、基質にリン酸を加えた後に分解される反応である。
アルドラーゼにより六炭糖が三炭糖に開裂する反応(図2)は、反応の前後で基質と生成物でリン酸の総数は変化しないため、加リン酸分解ではない。なお、図2の反応は、逆アルドール反応である。
2 誤
解糖系では、D−グルコースからジヒドロキシアセトンリン酸(代謝物A)を生じるまでの過程(正確にはD−グルコースからD−フルクトース1,6-ビスリン酸を生じるまでの過程)で2 molのATPを消費する。
また、1,3-ビスホスホグリセリン酸(代謝物C)からピルビン酸が生じるまでの過程では、基質レベルのリン酸化によりATPが産生される。
3 誤
グリセルアルデヒド3-リン酸(代謝物B)から1,3-ビスホスホグリセリン酸(代謝物C)を生じる反応は、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼによる酸化反応であり、グリセルアルデヒド3-リン酸を酸化的にリン酸化する。
一般的な解糖系における基質レベルのリン酸化反応は、ホスホグリセリン酸キナーゼ及びピルビン酸キナーゼが触媒するATP産生反応を示す。
4 誤
図3のグリセルアルデヒド3-リン酸(代謝物B)から1,3-ビスホスホグリセリン酸(代謝物C)を生じる反応で生じたNADHは、シャトル機構によりミトコンドリアのマトリックスに運ばれるわけではない。
シャトル機構によりミトコンドリアのマトリックスに運ばれるのは、NADHが有する電子(水素原子)である。NADHが有する電子(水素原子)はグリセロール3-リン酸シャトルやリンゴ酸-アスパラギン酸シャトル等のシャトル機構により、細胞質からミトコンドリアのマトリックスに運ばれ、電子伝達系及び酸化的リン酸化によるATP産生に利用される。
5 誤
D−グルコースからD−フルクトース1,6−ビスリン酸の生成過程は、ATPにより抑制され、AMPにより促進される。
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解説動画1 ( 18:38 )
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