薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 理論問題 - 問 157,158
37歳女性。アレルギー疾患の既往歴なし。顔面に紅斑が出現したため、近医を受診し、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。ステロイド療法が施行され、病状は落ち着いた。副腎皮質ステロイド性薬の漸減中に、突然、上機嫌になって多弁となったり、急に無表情になったり、「スマートフォンの使い方が分からなくなった。」と困惑して涙ぐんだりする症状が目立つようになった。血液検査の結果は以下のとおりである。
(検査値)
赤血球400×104 /µL、白血球5,120 /µL、血小板20.8×104 /µL、
血清クレアチニン1.84 mg/dL、eGFR 32.8 mL/min/1.73m2、
空腹時血糖112 mg/dL、HbA1c 6.5%、抗核抗体(+)、尿タンパク(2+)
尿潜血(+)
問157(病態・薬物治療)
この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 SLEはⅠ型アレルギーによって発症した。
2 顔面の紅斑は鼻梁から頬にかけて一側性である。
3 副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる。
4 血液検査から汎血球減少症が疑われる。
5 血液検査からループス腎炎が疑われる。
問158(薬理)
SLE及びその合併症の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 シクロホスファミドは、肝臓で代謝されて活性体となり、DNAをアルキル化して、DNAの複製を阻害する。
2 ミゾリビンは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害して、チミジル酸の合成を抑制する。
3 タクロリムスは、活性化T細胞核内因子(NFAT)のリン酸化を阻害して、IL−2の産生を抑制する。
4 ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、プリン塩基の合成を抑制する。
5 ベリムマブは、Bリンパ球細胞膜のCD20に結合して、Bリンパ球の増殖を抑制する。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問157 解答 3、5
1 誤
全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)は、自己免疫疾患の一つであり、自己抗体により形成される免疫複合体が組織に沈着するⅢ型アレルギーによって、全身の臓器に慢性の炎症を生じる疾患である。
2 誤
SLEの特徴的な症状として、両側頬部から鼻梁にわたる蝶形紅斑があげられる。
3 正
突然上機嫌になって多弁となったり、急に無表情になったり、涙ぐんだりしていることから、本患者は副腎皮質ステロイド性薬の漸減中における中枢神経ループス症状が疑われる。
4 誤
血液検査において、赤血球数400×104 /µL(正常値:380〜500×104/ µL)、白血球数5,120 /µL(正常値:4,000〜9,000/ µL)、血小板数20.8×104 /µL(正常値:10〜40×104/µL)であり全て正常範囲内であるため、汎血球減少は認められない。
5 正
血液検査において、血清クレアチニン1.84 mg/dL(正常値:0.5〜0.9 mg/dL)と高値を、eGFR 32.8 mL/min/1.73m2(正常値:約60 mL/min/1.73m2以上)と低値を示しており、腎機能が低下していることから、本患者はループス腎炎が疑われる。
問158 解答 1、4
1 正
シクロホスファミドは、肝臓で代謝されて活性体となり、主にDNA鎖のグアニン塩基をアルキル化して、リンパ球のDNAの複製を阻害する。
2 誤
ミゾリビンは、イノシン酸デヒドロゲナーゼを阻害し、イノシン酸からグアニル酸への代謝を阻害することによりプリン塩基の合成を抑制する。なお、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害してチミジル酸の合成を抑制する薬物は、メトトレキサートである。
3 誤
タクロリムスは、ヘルパーT細胞のイムノフィリンの一種であるFKBPに結合し、カルシニューリンを阻害することで、
活性化T細胞核内因子(NFAT)の脱リン酸化を阻害して、IL−2、IFN-γなどのサイトカインの産生を抑制する。
4 正
ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、イノシン酸デヒドロゲナーゼを阻害し、イノシン酸からグアニル酸への代謝を阻害することによりプリン塩基の合成を抑制する。
5 誤
ベリムマブは、完全ヒト型抗Bリンパ球刺激因子(BLyS)モノクローナル抗体であり、B細胞のアポトーシス抑制し、形質細胞への分化を促進させるタンパク質であるBLySの作用を阻害することで、免疫抑制作用を示す。なお、Bリンパ球細胞膜のCD20に結合して、Bリンパ球の増殖を抑制する薬物はリツキシマブである。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿