薬剤師国家試験 令和06年度 第109回 - 一般 実践問題 - 問 196,197
学校薬剤師が授業中の教室の環境に係る検査を実施するため、中学校を訪れた。この学校には冷暖房設備と機械換気設備が設置されている。学校薬剤師は、検知管を接続した測定機器を用いて、2限目の授業が終了する直前に養護教諭立会いのもと、教室内で二酸化炭素濃度を測定した。
(測定結果)
二酸化炭素濃度:1,600 ppm
学校環境衛生基準:二酸化炭素濃度は1,500 ppm以下であることが望ましい。
問196(実務)
測定結果をもとに学校薬剤師が行うこととして、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 測定結果が1,500 ppmを超えたので、未使用の検知管を使って測定機器の気密性点検を実施する。
2 教室を30分以上換気し、生徒がいない状態で二酸化炭素濃度を再測定する。
3 換気設備の運転時間の検討や工夫を行った後に、換気能力の確認等機械の点検や整備の実施を助言する。
4 重大な健康被害を生じる可能性が高いことを養護教諭に伝える。
5 測定結果に加え、一酸化炭素などの他の汚染物質濃度の測定結果も合わせて、空気清浄度を総合的に評価する。
問197(物理・化学・生物)
二酸化炭素の検出法とその原理に関連する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 検知管法は、二酸化炭素が酸性溶液に吸収される性質を利用している。
2 検知管法では、検知管に充てんした検知剤中のpH指示薬の色の変化によって二酸化炭素を検出する。
3 二酸化炭素は、赤外吸収スペクトル測定法でも検出できる。
4 二酸化炭素が対称伸縮振動をする場合、双極子モーメントは変化する。
5 二酸化炭素は、水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィーでも検出できる。
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問196 解答 3、5
教室内の空気は、外気との入れ換えがなければ、在室する児童生徒等の呼吸等によって、教室の二酸化炭素の量が増加するとともに、同時に他の汚染物質も増加することが考えられる。このため、学校環境衛生基準では教室等における換気の基準として、二酸化炭素濃度は1,500 ppm以下であることが望ましいとしている。
1 誤
気密性点検は測定結果をもとにするのではなく、必ず測定前に行う。
2 誤
二酸化炭素濃度が1,500 ppmを超えた場合は換気を行う。再測定は義務ではない。
3 正
換気を行った上で、機械による換気が行われる教室等においては運転時間の検討や工夫を行った後に、換気能力の確認等、機械の点検や整備を行う。このために学校薬剤師が助言することは適切である。
4 誤
二酸化炭素濃度1,600 ppmでは、眠気等の影響が出始めるが、重大な健康被害を生じる可能性は低い。
5 正
二酸化炭素の量とともに他の汚染物質の増加も考えられることから、空気清浄度の判定は、一酸化炭素及び揮発性有機化合物の濃度等の測定結果を踏まえて、総合的に評価する必要がある。
問197 解答 2、3
1 誤
検知管法は、二酸化炭素が塩基性溶液に吸収される性質を利用している。代表的な二酸化炭素の検知剤としてNaOH・チモールフタレイン検知剤が挙げられる。NaOH・チモールフタレイン検知剤はCO2がNaOHに吸収されるとpH指示薬(チモールフタレイン)が変色する性質を利用している。
2 正
検知管を用いて試料ガスの吸引を行ったとき、二酸化炭素によって検知剤中のpH指示薬が変色する。この時変色した検知剤の長さは測定対象物質の濃度に依存する為、検知管に印刷されている濃度目盛から測定対象物質の濃度を読み取ることができる。
3 正
赤外吸収が起きるためには、振動によって分子の双極子モーメントが変化する必要がある。二酸化炭素は2,350cm-1付近に双極子モーメントの変化する逆対称伸縮振動を持つため、赤外吸収スペクトルでも検出できる。
4 誤
二酸化炭素の対称伸縮振動のように分子の双極子モーメントが変化しない振動は赤外吸収スペクトル測定法では検出されず、これを赤外不活性という。
5 誤
水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィーでは、炭素−水素結合(C−H結合)を有する化合物を検出する。二酸化炭素は炭素−水素結合を持たないため、検出できない。
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