薬剤師国家試験 平成26年度 第99回 - 一般 実践問題 - 問 202,203
35歳女性。関節リウマチで通院中の患者に以下の処方せんが発行された。
問202(実務)
患者への情報提供に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 メトトレキサートカプセルを服用し忘れたときは、葉酸と一緒に服用する。
2 妊娠の疑いがある場合には、すべての薬剤の服用を速やかに中止して、医療機関に連絡する。
3 高熱や咳が続く場合には、直ちに医療機関に連絡する。
4 サラゾスルファピリジン腸溶錠を服用し忘れても、次回に2回分まとめて服用してはならない。
5 尿が黄赤色になることがある。
問203(物理・化学・生物)
メトトレキサートの治療薬物モニタリングには、イムノアッセイが利用されている。イムノアッセイに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 メトトレキサートのような低分子は抗原性を示さないので、抗体作製には、高分子と結合させる必要がある。
2 競合法では、測定対象物質の存在量に依存してシグナル強度が減少する用量依存曲線が得られる。
3 蛍光偏光イムノアッセイでは、蛍光標識した抗原が抗体に結合すると抗原の回転運動が減少するため、蛍光偏光度は減少する。
4 Enzyme multiplied immunoassay technique(EMIT)は、均一系イムノアッセイの1種である
5 凝集比濁法では、免疫複合体の形成により粒子が凝集する性質を応用している。
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問202 解答 1
1 誤っている
メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗薬であるため、原則、葉酸と同時に服用することはない。本症例では、メトトレキサートによる副作用を軽減するために葉酸が処方されている。その際、通常、葉酸はメトトレキサートを最後に服用した時点から24〜48時間後に服用する。
2 正しい
妊婦又は妊娠している可能性のある患者にメトトレキサートは「禁忌」、サラゾスルファピリジンは「慎重投与」となっていることから、「妊娠の疑いがある場合には、すべての薬剤の服用を速やかに中止して、医療機関に連絡する。」ことは正しい情報提供であるといえる。
3 正しい
メトトレキサートの重篤な副作用に間質性肺炎、肺線維症があり、サラゾスルファピリジンの重篤な副作用に間質性肺炎がある。これらの初期症状として、発熱、咳、息切れなどが現れることがあるため、「高熱や咳が続く場合には、直ちに医療機関に連絡する。」ことは正しい情報提供であるといえる。
4 正しい
サラゾスルファピリジン腸溶錠を服用し忘れた場合には、気づいた時にできるだけ早く服用するように指導し、次回服用時点が近い場合には、その回の服用を中止し、決められた時間に1回分服用するように指導する。
5 正しい
サラゾスルファピリジンを服用することにより、皮膚、爪及び尿・汗等の体液が黄赤色に着色することがある。
問203 解答 3
1 正しい
低分子物質は抗原性を示さないため、単独では抗体産生させる能力がほとんどない。低分子物質に抗原性を持たせるには、高分子を結合させる必要がある。このことより、メトトレキサートのような低分子物質を用いて抗体作製する場合には、高分子を結合させること必要がある。
2 正しい
競合法では、放射性同位元素や蛍光物質で標識した測定対象物質と非測定対象物質が抗体に対して競合反応する。競合法において、測定対象物質の存在量(抗原量)が増加すると、シグナル強度が減少する用量反応曲線が得られる。
3 誤っている
蛍光偏光イムノアッセイにおいて、分子量の小さいものは溶液中において回転運動するため、生じる蛍光偏光が解消され、蛍光偏光度は減少する。一方、分子量の大きいものは、回転運動が低下するため、蛍光偏光度は増大する。よって、蛍光偏光イムノアッセイでは、蛍光標識した抗原が抗体に結合すると抗原の回転運動が減少するため、蛍光偏光度は増大する。
4 正しい
Enzyme multiplied immunoassay technique(EMIT)は、試料(非標識抗原)と酵素標識抗原が抗体と競合的に結合することを利用した均一系イムノアッセイの1種である。
5 正しい
凝集比濁法では、抗原抗体反応により粒子が凝集し、懸濁液が形成される。その懸濁液の濁度の増加や粒子の量から対象物質を定量する。なお、抗体を結合させたラテックス粒子が、試料中の抗原と免疫複合体を形成するラテックス凝集比濁法が生体成分の定量などに利用されている。
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