薬剤師国家試験 平成26年度 第99回 - 一般 実践問題 - 問 262,263
64歳男性。大腸がんのため腫瘍摘出手術を受けた。その後、外来にてオキサリプラチン・カペシタビン療法を半年間続けている。
問262(薬理)
処方された抗悪性腫瘍薬の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 微小管を安定化し、細胞分裂を抑制する。
2 DNA鎖に架橋を形成し、DNA複製を阻害する。
3 血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害し、血管新生を抑制する。
4 生体内で5−フルオロウラシルに変換され、DNA合成を阻害する。
5 ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、プリン生合成系を抑制する。
問263(実務)
薬剤師が患者と面談中、「最近、朝の洗顔時、水が手先にぴりっとくることがあります。また、手足の皮膚が硬くなり、ひび割れが起きました。」との訴えがあった。この患者の症状の原因として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。
1 オキサリプラチンによる骨髄抑制に伴う症状
2 オキサリプラチンによる末梢神経障害
3 カペシタビンによる手足症候群
4 カペシタビンによる下肢浮腫
5 カペシタビンによる皮膚粘膜眼症候群
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問262 解答 2、4
オキサリプラチンは白金錯体系化合物であり、DNA鎖内及びDNA鎖間に白金架橋を形成し、DNAの複製及び転写を阻害する。また、カペシタビンは5−フルオロウラシル(5−FU)のプロドラッグであり、生体内で5−FUに変換後、さらに代謝され5−フルオロデオキシウリジン酸(5−FdUMP)となり、デオキシウリジン酸(dUMP)と拮抗することによりチミジル酸合成酵素(TMP合成酵素)を阻害して、DNA合成を阻害する。
1 誤
微小管を安定化し、細胞分裂を抑制する薬物は、パクリタキセルやドセタキセルなどである。パクリタキセルやドセタキセルは、微小管タンパク質重合の促進、微小管の安定化・過剰形成を引き起こし、紡錘体の機能を障害することにより細胞分裂を抑制する。
2 正
3 誤
血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害し、血管新生を抑制する薬物は、ベマシズマブなどである。ベマシズマブは、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体製剤であり、腫瘍細胞から分泌されるVEGFに結合し、VEGFとVEGF受容体との結合を阻害する。それにより、VEGFによる血管新生を抑制し、腫瘍細胞の増殖を阻害する。
4 正
5 誤
ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、プリン生合成系を抑制する薬物は、メトトレキサートなどである。メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することで、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害し、細胞分裂を抑制する。
問263 解答 3
「最近、朝の洗顔時、水が手先にぴりっとくることがあります。また、手足の皮膚が硬くなり、ひび割れが起きました。」と患者が訴えていることから、この患者の症状の原因として最も可能性が高いのは、カペシタビンによる手足症候群(初期症状:手足の感覚異常、角化による皮膚の硬化、ひび割れ、びまん性発赤、色素沈着など)であると考えられる。
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