薬剤師国家試験 平成26年度 第99回 - 一般 実践問題 - 問 298,299
30歳男性。全身倦怠感、食欲不振、下痢、体重減少を訴えて受診した。抗HIV抗体が陽性であり、CD4陽性リンパ球の減少が見られた。後天性免疫不全症候群(AIDS)の診断を受け、薬物療法を開始することとなった。
問298(病態・薬物治療)
HIV感染症の治療に用いられるのはどれか。2つ選べ。
1 ファムシクロビル錠
2 エファビレンツ錠
3 アタザナビル硫酸塩カプセル
4 エンテカビル水和物錠
5 リバビリンカプセル
問299(実務)
この患者への治療に関する記述のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 治療目標は、血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続けることである。
2 治療は、原則として多剤併用療法で開始する。
3 治療により免疫機能の指標が改善したら、速やかに薬剤の服用を中止する。
4 患者に対して、日和見感染の予防と早期発見の方法を説明する。
5 抗HIV薬は、併用薬との相互作用に注意する必要があるので、他医療機関を受診する際には抗HIV薬を服用中であることを申し出るように指導する。
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問298 解答 2、3
1 誤
ファムシクロビルは、体内で代謝を受けてペンシクロビルとなり、抗ヘルペスウイルス作用を示す。ペンシクロビルは感染細胞内で、ウイルス由来のチミジンキナーゼによりリン酸化され、さらに宿主細胞由来キナーゼにより三リン酸化体となることでウイルスDNAポリメラーゼを阻害する。
2 正
エファビレンツは、HIV感染細胞内でリン酸化され活性体となりHIVの逆転写酵素を非競合的に阻害することでHIVの増殖を抑制する。
3 正
アタザナビル硫酸塩は、HIVプロテアーゼの活性部位に選択的に結合することでHIVの増殖を抑制する。
4 誤
エンテカビル水和物は、慢性B型肝炎の治療に用いられる。エンテカビル水和物は、ウイルス感染細胞内でリン酸化されてエンテカビル三リン酸に変化した後、B型肝炎ウイルス由来のDNAポリメラーゼを阻害する。
5 誤
リバビリンは、インターフェロンとの併用で慢性C型肝炎の治療に用いられる。リバビリンはウイルス感染細胞内でリン酸化されリバビリン三リン酸に変化した後、C型肝炎ウイルス由来のRNAポリメラーゼを阻害する。
問299 解答 3
1 適切
HIV感染症の治療目標は、血中ウイルス量(HIV−RNA量)を長期にわたって検出限界以下に抑え続けることである。
2 適切
HIV感染症の治療は、原則として作用機序の異なる抗HIV薬を併用する多剤併用療法(3剤以上を併用投与するHAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)療法)で開始する。
3 不適切
抗HIV薬は、HIVの増殖を抑え、免疫機能の指標を改善することはできるが、HIVを体内から排除することはできない。そのため、抗HIV薬による治療により免疫機能の指標が改善しても、HIVは体内に存在するため、継続して薬物療法を行う必要がある。
4 適切
HIV感染により、免疫不全状態となるため、日和見感染が起こる。よって、HIV感染患者に対しては、日和見感染の予防と早期発見の方法を説明する必要がある。
5 適切
多くの抗HIV薬は、肝シトクロムP450で代謝されるため、シトクロムP450で代謝される薬剤と相互作用を起こす可能性がある。そのため、他医療機関を受診する際には抗HIV薬を服用中であることを申し出るように説明する必要がある。
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