薬剤師国家試験 平成24年度 第97回 - 一般 実践問題 - 問 228,229

40歳男性。8月3日の早朝、下痢、腹痛、嘔吐と発熱を訴えて救急外来を受診した。医師が問診したところ、前夜に友人5人とイカ釣りに出かけ、船上で釣ったイカをイカそうめん（細切りの刺身）にして食べたとのことであった。友人5人も同様の症状を訴えているという。医師は食中毒と診断し、便の検査をオーダーするとともに、薬剤師に治療薬についての処方提案を求めた。

問228（衛生）
この症例において、食中毒の原因として最も可能性が高いのはどれか。１つ選べ。

１　サルモネラ属菌
２　ノロウイルス
３　アニサキス
４　腸炎ビブリオ
５　ウェルシュ菌


問229（実務）
この患者の初期の治療に最も適した薬剤はどれか。１つ選べ。

１　セフェム系抗菌薬
２　電解質輸液
３　止瀉薬
４　解熱鎮痛薬
５　鎮痙薬

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問228　解答　４

本問の時期は夏期（8月3日）であり、魚介類（イカ）の生食により食中毒症状（下痢、腹痛、嘔吐、発熱）を示していることから、この食中毒の原因は腸炎ビブリオの可能性が高い。

１　誤
サルモネラ属菌による食中毒の主な原因食品は、動物の糞尿により汚染された鶏卵、食肉などである。

２　誤
ノロウイルスによる食中毒の主な原因は、カキなどの二枚貝の生食などである。

３　誤
アニサキスによる食中毒の主な原因食品は、魚介類であり、冬期に発生しやすい。アニサキスによる食中毒では、激しい腹痛、嘔吐がみられる。

４　正
前記参照

５　誤
ウェルシュ菌による食中毒の主な原因食品は、肉類や魚介類を加熱調理後放置されたもの（カレー、シチューなど）などである。


問229　解答　２

腸炎ビブリオによる食中毒では、下痢や嘔吐により脱水症状になりやすいため、脱水症状を改善するために、電解質輸液の点滴を行う。

１　誤
腸炎ビブリオによる食中毒では、電解質輸液を投与することで数日中に回復することが多いため、抗菌薬を投与することは稀である。なお、症状が重篤な場合には、ニューキノロン系抗菌薬やホスホマイシンを投与することがある。

２　正
前記参照

３　誤
止瀉薬や鎮痙薬を用いると、腸管に存在する腸炎ビブリオの排泄を抑制することがある。そのため、止瀉薬や鎮痙薬は、腸炎ビブリオによる食中毒の治療には用いられない。

４　誤
解熱鎮痛薬を用いると、脱水症状を悪化させることがある。そのため、解熱鎮痛薬は、腸炎ビブリオによる食中毒の治療には用いられない。

５　誤
解説3参照

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