薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 256,257
70歳女性。高血圧、心筋梗塞の既往あり。処方1〜処方3の薬剤を服用していたが、脂質異常症の治療効果不十分のため処方4が追加された。現在の身体所見等は以下のとおりである。
身体所見:身長155 cm、体重56 kg、血圧118/75 mmHg、脈拍数67拍/分(整)
血液検査:AST 30 IU/L、ALT 28 IU/L、血清クレアチニン値0.75 mg/dL、BUN 17 mg/dL、HDL 42 mg/dL、LDL 122 mg/dL、TG(トリグリセリド)110 mg/dL
問256(薬理)
処方1〜処方4のいずれかの薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 胆汁酸を吸着して小腸での再吸収を阻害して、コレステロールの胆汁酸への異化を促進する。
2 アンジオテンシン変換酵素を阻害して、ブラジキニンの分解を抑制する。
3 電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断して、細動脈を拡張させる。
4 ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)に結合して、アポタンパク質Bへのトリグリセリドの転送を阻害する。
5 シクロオキシゲナーゼを阻害して、血小板におけるトロンボキサンA2産生を抑制する。
問257(実務)
この患者の脂質異常症の治療に関して、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 HDLの目標値は45 mg/dL未満である。
2 LDLの管理目標値は、既往歴のない患者の目標値(140 mg/dL)より低く設定されている。
3 TGが管理目標値以上であるため、ベザフィブラートの追加が必要である。
4 処方3の薬剤の吸収が低下するため、処方4は服用時間を夕食後に変更する。
5 処方4の薬剤の追加で十分な効果が得られない場合は、プロブコールをさらに併用する。
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問256 解答 3、5
1 誤
陰イオン交換樹脂であるコレスチラミンなどに関する記述である。コレスチラミンは、腸管内で胆汁酸を吸着して小腸での再吸収を阻害して、肝細胞内でコレステロールから胆汁酸への異化を促進し、肝臓でのコレステロール需要が高まることで、肝細胞表面の低密度リポタンパク質(LDL)受容体数が増加し、血清LDL値が低下する。
2 誤
アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるエナラプリルなどに関する記述である。エナラプリルは、アンジオテンシン変換酵素を阻害して、アンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡへの変換を抑制するため、アンギオテンシンⅡによる昇圧作用を抑制する。なお、エナラプリルは、ブラジキニンの分解を抑制する作用も併せ持つため、ブラジキニンによる気管支平滑筋収縮作用により、空咳を引き起こす。
3 正
処方2のアムロジピンに関する記述である。アムロジピンは、血管平滑筋の電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断し、細胞内へのCa2+の流入を減少させるため、細動脈を拡張させる。
4 誤
脂質異常症治療薬のロミタピドに関する記述である。ロミタピドは、小胞体内腔に存在するミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)に結合して、アポタンパク質Bへのトリグリセリドの転送を阻害する。これにより、肝細胞での超低比重リポタンパク(VLDL)や小腸細胞でのキロミクロンの形成を阻害し、肝臓からのVLDLの分泌を抑制することで、血清コレステロール(Cho)値を低下させる。
5 正
処方1のアスピリンに関する記述である。アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して、血小板におけるトロンボキサン(TX)A2産生を抑制することで、血小板凝集を抑制する。
問257 解答 2
1 誤
本患者のHDLの管理目標値は40 mg/dL以上である。
2 正
本患者のLDLの管理目標値は、心筋梗塞の既往歴があるため、100 mg/dL以下であり、既往歴のない患者の目標値(140 mg/dL)より低く設定されている。
3 誤
本患者のTGの検査値は110 mg/dLであり、TGの管理目標値は150 mg/dL未満であるため、ベザフィブラートの追加は必要ない。
4 誤
処方3のロスバスタチンと処方4のエゼチミブを併用することで、ロスバスタチンの吸収が低下するという報告はないため、エゼチミブ服用時間を夕食後に変更する必要はない。
5 誤
プロブコールは、肝臓でコレステロールから胆汁酸への異化排泄を促進することで、血清LDL値を低下させるほか、抗酸化作用を有し、LDLの酸化変性による動脈硬化を予防する。しかし、プロブコールは、心筋梗塞の新鮮例及びうっ血性心不全のある患者に投与すると、心室性不整脈を起こす恐れがあるため、慎重投与となっており、本患者に追加するのは適切ではない。
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